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第281話 

遠藤西也の険しい表情を見て、遠藤花は思わず身震いした。

彼は時々彼女に厳しく当たるが、遠藤花はそれが本心からではないことを理解していた。

しかし今回は、彼の目に真剣な警告の色が浮かんでいるのを感じ、

遠藤花は一瞬言葉を失い、思わず頭皮がピリピリとした。

遠藤西也はベッドに戻って腰を下ろし、冷たく言い放った。「血の繋がった兄妹以外に、本当の兄妹なんているもんか?」

藤沢修が若子の「兄」になりたがっているようだが、あんな状況で関係がこじれて、挙句の果てに離婚した男が、今さら兄妹になろうなんて、笑わせるにもほどがある。

藤沢修は臆病者だ。若子の夫でいる覚悟もないくせに、彼女を手放したくなくて兄妹だなんて言い出す。

貪欲で卑劣な男。

遠藤西也は、そんな藤沢修のような弱さを自分には絶対に許さなかった。

「兄」なんて、そんなまやかしの関係はごめんだ。

彼が望むのはもっと現実的で真実のある関係であり、作り物の関係ではない。

遠藤花はようやく事の本質に気づき、兄が若子の「兄」であることを拒絶する理由がはっきりと理解できた。

兄が望んでいるのは、彼女の兄ではなく――

「おお兄ちゃん、ごめんね、私ってばバカね!」と遠藤花は自分の額を軽く叩き、「分かったよ、お兄ちゃんの言う通りだ、兄になるわけにはいかないよね。本当にごめん、妹から兄へ謝罪するわ」

と言いながら、古風にお辞儀してみせた。

「じゃあ、私はもう行くね」

彼女はさっさとその場を立ち去ろうとした。花瓶の件で来ただけなので、これ以上兄の顔色を窺う必要もないと思ったのだ。

ドアに向かって歩き出した瞬間、遠藤西也がふと思い出したように、「ちょっと待て」と呼び止めた。

遠藤花は足を止め、振り返って「また何か?」と尋ねた。

自分が何かまたやらかしたのかと不安がよぎる。

遠藤西也は指で彼女を招き、「こっちに来い」と命じた。

「なんで?」と彼女は少し不満げに返した。

「いいから、黙って来い」彼は苛立ちを含んだ声で返す。

渋々ながら彼のそばに寄った遠藤花の前に、

遠藤西也は枕元のスマホを差し出し、何かを表示させて彼女に見せた。

「俺の最後のメッセージ、何かおかしいところはないか?」

遠藤花は不思議に思いながら、画面を覗き込んだ。そこには若子とのメッセージの最後が表示されている。

遠藤西也:【お
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